概要
600名以上の参加者が集まった今回のConferenceに参加し、今、非常にモメンタムのあるOSSプロジェクトであること、そして日本以上に米国、ヨーロッパ、南米地域での注目度の高さを改めて実感した。また、個別プロジェクトも続々と立ち上がっており、数年後には、クラウドコンピューティング基盤に必要なモジュールのほとんどが、OpenStackで間に合うのではないかと予感させる程の熱気のあるConferenceであった。
今回は、RackSpace Cloud BuilderのGeneral ManagerであるJim Curryの基調講演および注目されているプロジェクトについて簡単にレポートする。
OpenStack State of the Union: 2011年10月6日 (木)
9月にリリースされたDiabloの報告
- 最初の6ヶ月サイクルでのリリースしたバージョン
- 67以上の新機能を実装
- ネットワークとスケーラビリティに重点
NovaとSwiftの主な新機能
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Nova (Compute機能)
- 大規模化対応。ゾーンを意識したVM割り付け
- ボリュームのスナップショット機能、複製機能、bootable disk 機能 (弊社山幡開発)
- ライブマイグレーション対応
- 仮想ディスクアレイ対応 (VA Storageと同じようなコンセプト)
- Swift (Object Storage機能)
- 複数Swift間で、オブジェクトの複製を持ち合うことができる。
- Swift監視系機能の新実装 (Recon)
新しい2つのインキュベートプロジェクトのアナウンス
Diabloのリリースには含まれなかったが、次期リリース版(コードネーム “Essex”) に正式に取り込まれる予定の、現在ホットな開発プロジェクト
- Quantum
下層ネットワークを制御する機能で、現在最もホットなプロジェクトと思われる。ユーザごとに独立した仮想ネットワークを定義することができる。現時点ではL2レイヤのネットワークのみサポートしているが、EssexのリリースまでにL3レイヤのネットワークもサポートする予定。サブプロジェクトであるDonabeも進行中。ネットワーク構成とサーバを組み合わせたコンテナと呼ばれる単位での管理を可能にすることを目指す。 - OpenStack Identity (コードネーム”Keystone”)
全OpenStackプロジェクトへの統一した認証機能の提供と既存の外部認証システムの統合が出来る機能。 -
OpenStack Dashboard
サービスポータルを通じて、管理者やユーザにクラウドリソースへのアクセスとプロビジョニング機能を提供するWeb UI。システム運用者向けのUIと、クラウド利用者用のUIの両方を備える。NovaもSwiftも制御できる。現在開発中のQuantumもカスタマイズ性に力をいれている。新機能を簡単にプラグインできる。
Conferenceに参加し、世界中の開発者と意見交換をすることができた。また、Rackspaceが10月5日にOpenStackのブログにて、2012年までにOpenStackを完全に移管する財団を創設することを発表(http://www.openstack.org/blog/2011/10/openstack-foundation/#)した通り、OpenStackプロジェクトを立ち上げたRackspaceが一歩引く形となったことが唯一の懸念である。
ただ、大手サーバベンダであるHPやDell、大手ネットワークベンダであるCiscoがプロジェクトに大きくコミットしており、Rackspaceに代わるビッグスポンサーとして、プロジェクトをリードしていくことになるだろう。弊社も今後のクラウドコンピューティング分野の有力候補となっていくであろうOpenStackの開発に携わりながら、今後の展開を敏感に捉え、日本のユーザにフィードバックしていきたい。