概要
2013年4月にオレゴン州ポートランドにて開催された前回に引き続き、今回もOpenStack Summit に参加してきました。OpenStack の動向と所感について、簡単にレポートいたします。
今回は、初めてアメリカ以外の香港にて開催されましたが、前回発表と同数である3,000人が参加し、その内の2/3が初参加と発表されていました。その中でも想像していた以上に、日本人の参加者が多かったのは驚きでした。
今回のSummitでは、2種類のPassが準備されていました。4日間のFull Passは弊社技術者 (開発者セッションレポートはこちら) に託し、最初の2日間だけのGeneral Passを選びました。General Passで参加できるのはKeynoteとGeneralセッション、展示会だけに限られ、ベンダーの技術動向セッションに参加できないものがあったのが、大変心残りでした。
OpenStackの動向と所感
オープニングのライオンダンス (獅子舞に近いもの) に引き続き、Keynoteでは、初日にShutterstock、DigitalFilm Tree、Concurの3社、2日目に中国企業であるiQivi、Qihoo 360、Ctripの3社が、OpenStackの採用事例を紹介していました。中国におけるOpenStackの勢いが日本以上に感じられました。特に世界中で最も開発者が多い都市が北京であり、上海もトップ10に入っているとのこと、両都市共にOpenStackコミュニティも盛んだそうです。
OpenStack Foundationのプラチナスポンサー8社の内、Canonical、HP、Red Hat、IBMの4社が今回のSummitのヘッドラインスポンサーとして基調講演を行いました。ただ、プラチナスポンサーであるNebulaが、今回はプレミアムスポンサー、イベントスポンサー、スタートアップスポンサーいずれも参加していなかったことが残念です。
KeynoteのトップバッターはCanonical。UbuntuはOpenStackのリファレンスOSであり、導入実績の80%を占めていることを強調していました。他OSベンダーを意識してか、差別化を図っていきたい同社の思いを感じました。そのためか、後半はJuJuの紹介にフォーカスしていました。また、IBMはOpenStackの取り組みと自社製品 SmartCloudを紹介されていました。
2日目はRed Hatの基調講演からスタート。前バージョンのGrizzlyに最も貢献した実績と、今後もOpenStackに注力することが語られました。製品としては、コミュニティ版Fedoraベースの”RDO”、商用版”Red Hat Enterprise Linux OpenStack Platform”の提供を行いつつ、次バージョンでも8プロジェクト (Ironic, Trove, Marconi, Savanna, TripleO 等) に取り組んでいく姿勢を表明されていた事が印象的でした。
本Summitでもセッションを持っていた米Red Hatの技術者が、翌週 (11月15日) に日本で開催されたレッドハット・フォーラム 2013にも登壇し、お話をされていました。
HPは、ハイブリッドクラウドの重要性をOpenStackを絡めて説明しており、また、コミュニティの重要性も訴求していました。
上記4社は、共に表現の違いはあれど、OpenStackへの思いを強く感じられ、今後も貢献していくことと思われますので期待しています。
次に、参加できるセッションで気になった点ですが、VMWareとCiscoのセッションが多く感じられました。Niciraとして今まで貢献していたVMWareとの印象を持っていましたが、今回はESXに関してもAPIを多数提供していることを強調しており、KVMやXenだけでなく、ESXも健在だという印象を受けました。Ciscoも自社製品のUCSとNexusに対して、プラグインを用意しており、SDNも含めてOpenStackに注力している点では同様な印象を受けました。
また、技術面とは異なりますが、前回導入事例を説明していたPaypalはOpenStackを導入したことで、業務手順が一新し、人事面でも変化が起きているようです。
eNovanceのセッションでは、自社でのFolsomからGrizzlyへの移行を半年掛けて実施した経験談と苦労話をしていましたが、やはり最後はTest,Test,Testと締めくくっていました。
Keynoteでも若干触れられていましたが、OpenStackは半年毎にバージョンアップしているので、「OpenStackや各種プロジェクトについて、ユーザがどのように考えるべきか」という観点からのセッションを設けてほしいと感じました。
一方、展示会に目を移してみると、前回と比べて明らかに出展社数が増えていました。また、気が付いただけでも、Arista、Brocade、Canonical、Hitachi、Midokura、MorphLabs、Red Hat (アルファベット順、他社で別途参加されていたら申し訳ありません) のブースでは、日本人の方々も説明に参加されていました。もちろん、中国の会社も数社出展していました。ベンダーを含め、日本の会社もOpenStackに取り組んでいるという姿勢を世界に向けて発信できている事を実感でき、嬉しく思いました。
その中でも印象深かった事があります。それは、前回までは、NTTとNECがパネルディスカッションでネットワークに関して講演されていましたが、今回のSummitでは、Yahoo! JAPANがBrocadeと共に事例紹介のセッションを開催していたことです。日本での実績が少ない現状の中で、取り組みを披露されるのは立派なことです (関係者の皆様、お疲れ様でした)。今後は日本でも、より多くのOpenStackの実績を残していきたいものです。
最後に、今後も弊社はOpenStackの動向には注力していき、日本での発展に貢献していきたいと思っております。